【廃村】滋賀県の旧・霊仙村付近の集落跡を巡る3 – 落合集落
滋賀県多賀町の山奥に位置する落合(おちあい)集落(通称:霊仙落合)は、現在は定住者がいない「廃村」となっていますが、かつては周辺の山岳集落の中心地として栄えた豊かな歴史を持っています。
川の合流点(落合)に位置し、霊仙山(りょうぜんざん)の険しい大自然に抱かれたこの集落が、どのような歴史を歩み、なぜ無人となったのかを詳しく紐解いていきましょう。
■1. 集落の起源と伝承
落合集落がいつ誕生したのか、正確な年代は記録に残っていません。しかし、地元には次のような興味深い伝承が残されています。
▷源頼朝の末裔伝説: 鎌倉時代、源頼朝の血を引く僧侶がこの地を切り拓いたとされています。旧霊仙村一帯に多かった「藤井」という姓の一族は、この僧侶の末裔であるという言い伝えがあります。
地理的には、芹川(せりがわ)の上流で複数の谷川が交わる場所に位置することから、古くから「落合」の名で呼ばれ、山間部でありながら比較的フラットな土地があったため人が定住する基盤が整っていました。
■2. 江戸〜大正時代:多賀ではなく「彦根」が生活圏だった
行政区画としては「犬上郡落合村」として江戸時代から記録に登場します。この時代の落合集落を語る上で興味深いのが、現在の多賀町中心部とは完全に交通が断絶されていたという点です。
▷陸の孤島と彦根との繋がり:実は、大正10年(1921年)頃まで、下流の河内や多賀方面へ抜ける川沿いの道(現在の主要アクセス路)は存在しませんでした。そのため、落合の人々は険しい山を越え、現在の彦根市(鳥居本や高宮など)へと向かって交易を行っていました。婚姻関係や文化も、彦根側の山岳集落(男鬼、武奈、米原市の榑ヶ畑など)と深く結びついていたのです。
▷寺院の創建と相次ぐ火災:集落の中心にある「蓮休寺(れんきゅうじ)」は安土桃山時代の1587年に創建されました。歴史ある寺ですが、1885年、1890年、1948年と3度も大火で全焼しており、現在残っている本堂は4代目の建物です。山間部での火災の恐ろしさと、その都度復興させてきた住民の結束力が窺えます。
▷面白い風習:「預かり牛」
大正時代以前、落合集落では「預かり牛」という独特な習慣がありました。5月末の田植えを終えて疲れ切った麓(彦根・高宮など)の農家の牛を、涼しい落合の山中で7月末まで預かって休ませるというものです。住民は牛を連れて険しい山道を越え、集落まで連れ帰って世話をしていました。
■3. 明治〜昭和初期:旧「霊仙村」の中心地へ
明治時代に入ると、落合集落は地域の中心として最も輝かしい時代を迎えます。
▷「霊仙村(りょうぜんむら)」の誕生:1874年(明治7年)、落合村・今畑村・入谷村の3つが合併し「霊仙村」となります(山の神である『霊山さん』に配慮してこの文字が使われたと言われています)。この中で落合は周辺環境や土地に恵まれていたため、役場などが置かれる地域の中心地(中核集落)として機能しました。
▷霊仙分校の開校: 1883年(明治16年)には、子供たちのために「霊仙学校(のちの多賀小学校霊仙分校)」が開校。近隣の今畑や入谷の子供たちも山道を歩いて落合の学校へと通いました。山奥の集落でありながら、早い段階から教育環境が整えられていたのです。
この頃の主な産業は、豊かな森林資源を活かした薪炭(炭焼き)、そして養蚕(カイコ)やゴボウ栽培でした。ピーク時には100人を超える人々がここで暮らしていました。
■4. 戦後:燃料革命と急速な過疎化
1941年(昭和16年)に霊仙村は多賀町へと合併されます。その後、戦後の高度経済成長期を迎えると、集落の運命は一変します。
▷産業の崩壊:1950年代後半からの「燃料革命」により、エネルギーの主役が薪や炭から石油・ガスへと移行。集落を支えていた炭焼きの需要が激減しました。
▷若者の流出と休校:生業を失ったことに加え、不便な山奥ゆえに若者たちが次々と街へ流出。1985年(昭和60年)にはついに学校の児童数が0人となり、長年親しまれた霊仙分校が休校(1993年に正式に廃校)となりました。
こうして限界集落化が進み、冬の間だけ麓へ下りる「冬季無人化」などを経て、1990年代半ば(1993年〜1995年頃)に最後の定住者が離れ、完全な無人(廃村)となりました。
■5. 現在の落合集落
現在、落合集落に定住している人はいません。しかし、全国に数ある廃村の中でも、落合はとても大切に守られている状態にあります。
▷元住民による手厚い維持管理:今でも元住民やその子孫の方々が定期的に集落へ戻り、草刈りや家屋の風通し、落合神社・霊仙神社の管理を続けています。そのため、荒れ果てたゴーストタウンというよりは、時が止まったかのような美しい日本の原風景が保たれています。
▷登山客の拠点として:霊仙山への南西登山口(汗ふき峠方面)に近いため、集落内の空き地は登山客向けの駐車場として活用されており、週末には今でも多くのハイカーが行き交う、どこか人の温もりが残る廃村となっています。
【廃村】滋賀県の霊仙村と近くの集落を巡る
【神秘旅 – Mituki】サブチャンネル
https://www.youtube.com/@MysticalTravels
【隠者の小屋】サブチャンネル
https://www.youtube.com/@Hermit-Hut
【Instagram】
https://www.instagram.com/Gods.Travels/
X(旧Twitter)
Tweets by GodsTravels
Facebook
https://www.facebook.com/mikamoto.mituki
Threads
https://www.threads.net/@Gods.Travels
00:00:00 落合集落へ向かう
00:01:28 地図
00:01:49 落合集落
2件のコメント
石垣が印象的ですね
That building next to the shipping container looks new, what is it for?